<展示期間>
2025年1月21日(火)〜2月16日(日)
開場時間:11:00−19:00(最終入場18:45)
休場日:月曜日
<展示概要>
「LOST⇄FOUND 変わる視点、交わる視線」では、CREATIVE HUB UENO “es”の前身が交番だったという経緯から“忘れもの”に着目しました。忘れもの(LOST)=忘れ去られていくものと捉え、そのような宿命にある社会的マイノリティや弱者の声にスポットライトを当て新たな視点を獲得すること(FOUND)を趣旨とした企画です。
本展は、東京藝術大学が開設する「東京藝大アーツプロジェクト実習」の実践的授業として、8名の学生がプロジェクトチームを組み、4週に渡りリレー形式で展覧会を開催します。CREATIVE HUB UENO “es”の空間を通じて時代を反映するメッセージを発信していきます。
【参加アーティスト】
熊井戸啓貴、田中和昌、小澤陣、佐藤れな、窪田望、海老名楓、佐藤利香、Koki Sakakihara
【展示スケジュール】
1/21(火)―1/26(日) 熊井戸啓貴 田中和昌 小澤陣「祖父母のわすれもの」
1/28(火)―2/2(日) 佐藤れな「Re:line 無くしたもののカタチ、思い出してみる」
2/4(火)―2/9(日) 窪田望「hand sketch, pencil drawing」
2/11(火)―2/16(日) 海老名楓 佐藤利香「交差する視点たち — 上野から見る異質と共存」
常設作品:Koki Sakakihara 「長ネギが何故に?渡せ!いや何故に」
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【1/21(火)―1/26(日)】熊井戸啓貴 田中和昌 小澤陣「祖父母のわすれもの」
出展者の祖父母の遺品を「故人の忘れ物」として解釈し、その遺品たちの過去の記憶を本パフォーマンスによって清め、新たな持ち主へ届けることを趣旨としています。“遺品整理”という行為を通して我々は物の精神的側面と物質的側面に着目しました。持主の姿は見えなくても生前使っていた遺品は故人との記憶を想起させます。 “遺品整理”は「片づける」という言葉で片づけられない故人との思い出と向き合い、心の整理を行う儀式なのかもしれません。また、物の寿命と持主の寿命が一致しないからこそ残された者たちによって遺された物を整理していかなければなりません。物が先に壊れれば直して使ったり保存したりできますが、持主を先に失った物はどこに向かえばいいのでしょうか?そういった物に宿る精神性と物質的寿命に折り合いをつけるために今回のような「物に宿る記憶を共有しながら新たな持主(里親)を見つけるパフォーマンス」を行います。
◼︎パフォーマンス日程
会期中は毎日11時より雅楽の生演奏と共に、記憶の共有と遺品の里親となるパフォーマンスを開催します。
1/21(火)11:00-11:30
1/22(水)11:00-11:15
1/23(木)11:00-11:15
1/24(金)11:00-11:15
1/25(土)11:00-11:15
1/26(日)11:00-11:30
※初日と最終日のみフルバージョンのパフォーマンスを行います。
<プロフィール>
熊井戸啓貴 Hirotaka Kumaido
國學院大学青葉雅楽会を経て、元宮内庁式部職楽部主席楽長 安齋省吾氏などに雅楽を師事。日本雅楽会会員、東京藝術大学音楽学部邦楽科雅楽専攻在籍。主な出演歴、テレビ朝日系列「題名のない音楽会」、NHK大河ドラマ「光る君へ」等。
田中和昌 Kazumasa Tanaka
東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻壁画研究分野在籍。大学では市民や鑑賞者との協同によって一つの体験を作り出す手法について研究中。今回の作品も参加者との協働によって「落とし物」にまつわる思考体験になることを念頭に置き制作している。
小澤陣 Jin Ozawa
1998年大阪府生まれ。株式会社アートフロントギャラリーで奥能登国際芸術祭のアシスタントマネージャーとして従事。2024年に退社し現在に至る。関西学院大学総合政策学部卒業。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻在籍。
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【1/28(火)―2/2(日)】佐藤れな「Re:line 無くしたもののカタチ、思い出してみる」
落とし物を拾った時、そのものを見て物語を考える。
誰の足跡も付いていない綺麗なハンカチを見て、持ち主が近くにいるのでは無いかと考えたり、ワイヤレスイヤホンの片方だけが落ちているのを見かけて、あーきっと持ち主は絶望しているだろうなと勝手に考える。
私たちはただ、落とされたものの輪郭線を見て、その物に秘められた物語をあれこれ考えてみるだけ。
落とし物の内側に意味や効果を求めようにも、肩透かしを食らうのみである。
そうは言っても、所有者には全てわかっているわけで、それこそが落とし物の魅力であると感じている。
今回の展示では、落とし物についてのアンケート資料を元に「落とし物の輪郭線」だけを取り出す。
落とし物が人の手を離れ、ただの物として存在している状態を表面化(表現)する。
<プロフィール>
佐藤れな Rena Sato
東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻壁画研究分野在籍。
人間どうしのテリトリーや個人の安心できる領域について興味を持ち制作している。
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【2/4(火)―2/9(日)】 窪田望「hand sketch, pencil drawing」
生成AIで画像を作成する際、多くの人は5本指になっていない画像を不用品として捨ててしまう。AIエンジニアもまた、このトピックスに対し、プログラミング能力や莫大なGPU、電力を使い、AIが5本の指を描写できるようになるように「進化」のために奮闘している。しかし、そこには3本指、多指症などのマイノリティーの暮らしが一切無視されており、「進化」の影に排斥されている。
本作では、AIが出力した5本指になっていない画像をドローイングするところから始めた。
AIは明確な数字で指の確からしさを出力するが、私たちにとって「確からしい指」とはなんなのだろうか。正常とはどこからどこまでなのか。何を正常としてAIに教えて行くべきか。この問いはAI開発者はもちろん、AI技術と無関係と思い込んでいる人にも問われている。明確に答えられない者はすべて、この無自覚な暴力性の共犯者であるかもしれない。
<プロフィール>
窪田望 Nozomu Kubota
東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻在籍。
経営者、AI開発者、発明家、YouTuber、美術家とジャンルを横断しながら、表現を行う。 山形県西川町では消えつつある方言をAIに学習させるなど、メディアテクノロジーとコンセプチュアルな手法を駆使し人間とAIというありふれた二項対立からの脱構築の実践を試みる。
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【2/11(火)―2/16(日)】海老名楓 佐藤利香「交差する視点たち — 上野から見る異質と共存」
上野には、日雇い労働者、ホームレス、観光客、文化施設の利用者、商店街の人々など、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が集う。文化的生活が混沌としたこのまちから、他のまちや人にも開いていけそうな、「異質さを共有する場」をつくれないかと考えた。異なる視点や背景を持つ人々が交わる機会を提供し、自身の位置や価値観を問い直すための場づくりを目指す。
海老名はホームレスの実態や声から、公共空間の異質さを様々な人に伝える。佐藤はあらゆる立場の記憶を交えながら、人の異質さを共有しあう。今まで素通りしてきた人や場所を視野に捉えるきっかけになるかもしれない。
<プロフィール>
海老名楓 Kaede Ebina
東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻壁画研究分野在籍。。
公共空間や文化芸術が「誰のものか」という問いを提起し、共生社会の可能性を探ることを目指す。
佐藤利香 Rika Sato
東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻在籍。芸術の現場に必要なコミュニケーションについて考えながら、アートマネジメントの実践と研究を行う。
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【1/21(火)―2/16(日)】Koki Sakakihara 「長ネギが何故に?渡せ!いや何故に」
「語呂ちゃん」という4行の韻で一つの作品にするプロジェクトを行なっており、現在10000個作成している。今回、異質な落としもの「長ネギ」とそれにまつわるストーリーを起点に、一つ語呂ちゃんを作成し、ミニチュアの長ネギのレプリカと共に展示する。
<プロフィール>
Koki Sakakihara
He wanna be a good tennis player. 彼は最高の大衆音楽、簡単に言ってしまえばヒットチャートの1位を獲る音楽を作るために創作活動を行う。現在、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程グローバルアートプラクティス専攻に在籍。クマ財団第8期生。