<展示期間>
2025年5月20日(月)〜6月15日(日)
開場時間:11:00−19:00(最終入場18:45)
休場日:月曜日
<展示概要>
2025年、久保田荻須は2017年の卒業制作《一時的廃棄目録》を再構成します。
本作は、生活空間に蓄積された家族の物品や自身の過去作品を取捨選別しながら、展覧会という場を生活環境の改善装置として活用するタイムスペシフィックなインスタレーションです。
本展では、生活と制作が重なるプロセスの再演を通して、「R=再利用・再配置・再構築…」をめぐる行為を実践し、アーティストの生産物がいかにして取り残されるか、その資産性と負債性について観客に問いを投げかける展示となります。
<アーティストステートメント>
本展は、久保田荻須智広が2017年に発表した卒業制作《一時的廃棄目録》を、約8年ぶりに再演するものである。
同作は、作家の生活空間に蓄積された家族の私物や過去作品を展覧会空間に持ち込み、それらを選別・配置することで、生活環境の整理と制作行為とを重ね合わせたインスタレーション作品である。展示の形式を利用して「片づける」という実践的行為を、時間・空間と結びついた一つの芸術表現として提示した。
今回の再構成は、作家の生活環境の変化を背景に、あらためて同様の課題と向き合うかたちで行われる。
展覧会タイトルである『5/?くらいのR』/”R: 5 out of ?” は、こうした不完全性・暫定性を象徴している。
本展では、芸術作品や創作物が時間の中でどのように残され、あるいは残されずにいくのか、またそれらが「資産」として機能しうるのか、「負債」として残されるのかといった問いを、生活と制作の交錯から浮かび上がらせようとするものである。
<プロフィール>
久保田荻須智広
2020年に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻版画研究分野を修了。現在、同大学院博士後期課程に在籍。文化資産が持つ「負債」としての側面に注目し、物品の一時的な移動や契約、他者の負債の肩代わりといった行為を通じて、しばしば物理的な制作を伴わない作品を展開している。彼の制作は、所有や管理、移動、保存といったプロセスそのものを介して、アートが制度や経済とどのように関わり合うのかを批評的に考察することを目的としている。近年の作品では、個人的な経験や実際の出来事を出発点とし、共同体における物の所有や責任の所在、そして個人から組織、さらには制度へと拡張する負債の関係性を探求している。
撮影: 松尾宇人
主な展示
2024年
《その姿の探し方》トーキョーアーツアンドスペース(東京) *キュレーション:COM_COURSE(吉村真+久保田荻須智広)
《practice_02: 繰り返す》EUKARYOTE(東京)
《メディウムとディメンション: Maze》ガスボンメタボリズム(山梨)*キュレーション:中尾拓哉
2023年
《AIR3 SCG》BnA Alter Museum SCG(京都)
2022年
《eat ro ekyu》EUKARYOTE(東京)*キュレーション:岩田智哉
など
<過去の作品>
《eat ro ekyu》2022/ 作品証明書、受付、バックヤード、仮設壁、冷蔵庫、ONU、電話、Wi-Fiルーター、モニター、映像、植木鉢、掃除用具、ペットボトル、石膏ボード、その他
その場にあるものの移動、交換、整理を行うことで作品とする。作品の題は《一時的未題》とし、それが実行された際には、その作品が実行される場所のアナグラムを作品名として変更する。本作品ではコマーシャルギャラリーである外苑前にあるEUKARYOTEのギャラリースペースそのものをモチーフとし、その内部の一時的な改装を行うことでスペースの機能改善を目指した。
©︎KUBOTAOGUISS Tomohiro
《一時的廃棄目録》2017/ 素材可変(倉庫から移動されてきた諸物品)
東京芸術大学の卒業制作として発表されたライフ・インスタレーション作品。
自身の家族の私生活の中で溢れてしまった多くの物品を展示室内に移動し、その展示期間と空間を活用して分別・整理を行っていく。会期中は、分別の内容に応じて配置を少しずつ変更する。会期終了後、不要と判断された物品は実際に廃棄され、残された物品は生活の中に戻される。
本作では、自身やその周囲が抱える物品を、適量になるまで再分別していくプロセスそのものを作品化した。
公共と私事のあいだにある価値判断、富と負債の二面性、判断の一時性とその曖昧さ、選択にともなう権威性と切実さ、そして幼稚さ——そうした要素が交錯する場として、本作はアーカイブ的な性格をもって展開された。
©︎KUBOTAOGUISS Tomohiro