CREATIVE HUB UENO “es”(エス)

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EXHIBITIONS
平山匠 個展
「Voice Coil Soul」

「Voice Coil Soul」2025年 / 粘土, 音, 音響機材, モニター, サイズ可変

<展示期間>
2025年6月24日(火)- 7月27日(日)
開場時間:11:00−19:00(最終入場18:45)
休場日:月曜日

<展示概要>
この度、平山匠の個展「Voice Coil Soul」を2025年6月24日(火)から7月27日(日)まで開催いたします。
平⼭にとって粘⼟を使った制作は、⼈と⼈とのコミュニケーションの⼿段であり、⾃分⾃⾝と向き合う時間でもあります。そうしたやり取りの中で感じる発⾒や違和感を独⾃の思想に落とし込み、「⽣きる上で必要な美術とは何か」を考え続けています。本展では、粘⼟の視点に⽴つこと、粘⼟に⾃らの意思を伝えるための新たな⼿段による挑戦が展開されます。
CREATIVE HUB UENO “es” の空間で、素材と対話する平山の試みを、ぜひこの機会にご高覧ください。

<アーティストステートメント>
支えている人や物。それらは何に支えられているのか。静かなシグナルに耳を傾けて、ワタシは大声で叫ぶ。地面の破れ目に鳴り響く。反すうして欲しいそれぞれの足の裏。

<推薦者コメント>
平山匠は粘土を伝統的な塑造技法から開放し、素材というよりはむしろ言語などでは伝わりづらい多様な背景を持つ人達とのコミュニケーションツールのように扱っている。そもそも土というメディアは人類の歴史と共にある、と考えれば腑に落ちる。今回の新たな試みに期待している。
東京藝術⼤学美術学部芸術学科美術教育研究室教授 渡邉 五⼤

<プロフィール>

©平山匠

平山匠
1994 年生まれ、彫刻家。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程美術教育専攻修了。陶や粘土を用い、他者との関係性を主題に国内外で作品を発表している。

主な展示

2022年「越後妻有 大地の芸術祭 2022」/ナカゴグリーンパーク
2023年「BankART Under 35」/BankART Station
    「Eye-Cloud-I」個展/Pacifica Collectives
2024年「SAPPORO PARALLEL MUSEUM」/札幌駅前通地下歩行空間
    「キャラクター・マトリクス」/BUG
    「六本木アートナイト2024」/六本木ヒルズ
    「カレらが力んだハニ山で」個展/島根県隠岐郡西ノ島町
2025年「ここがいい」個展/東葛西1-11-6A倉庫

<過去の作品>

「ハニラ」2024年 / 粘土、鉄、しゅろ縄
粘土は自ら語らず、触れた瞬間や、つくろうとした形をそのまま享受してくれる素材だ。
こんな噂を耳に挟んだ。日本にある粘土の産地から、この先10〜20年前後、粘土を採掘することがますます難しくなるらしい。
人間のエゴに寄り添い過ぎた粘土は、そのうちなくなってしまう。
宇宙開発闘争に巻き込まれ、元々人間だった宇宙飛行士ジャミラは、炎に強い怪獣となった。
しかし、故郷は地球にもかかわらず、逆に水が弱点になってしまう。そしてウルトラマンに葬られ、土に還った。
粘土やジャミラはどんな気持ちだったのだろう。
黄赤色の粘土でできたハニラは立ち上がる。ただそこに存在して肯定されるために。
私はハニラにたくさん語りかけたい。水をあげて、そのままの在り方を享受していきたい。


©平山匠「ハニラ」2024年 粘土, 鉄, しゅろ縄

「モンスター大戦記ハカイオウ」2020 / 粘土、兄の絵、兄との会話
幼い頃、兄は粘土のついた指先をつかって、安心した微笑みを浮かべながら、ゆっくり僕のほおをさすることがあった。この行為を「シュリュー」というらしい。「シュリュー」をする相手は決まって僕だけで、他の人には絶対にやらなかった。兄はその後かならずその手を使って絵を描き、粘土で何かをつくっていた。「なんで他の人にはシュリューしないの?」と彼に尋ねたら「ほっぺがつめたいから」という決まり台詞があった。
慌しい生活にちりばめられた出来事の全てが、知らない内に大陸のように繋がって、 人の関係性を浮かび上がらせる。そこには目には見えない“境界”があって、みんな目を向けようとする術を知らないらしい。 言葉だけのコミュニケーションをはかっても、イライラした顔や態度には、兄のような「シュリュー」が封印されてしまう。
兄が描き進めている絵「モンスター大戦記ハカイオウ」を幼い頃と同じように対話を進めながら、彫塑によって立ち上がらせる。それは僕が無意識的につくり出してしまっているかもしれない兄との“境界”に触れる試みだ。同時に兄の創造している絵の世界を三次元化して、他者が兄の世界を多角的に触れることができるようになる挑戦だ。支援や共作でもない生活の延長にある僕なりの「シュリュー」だ。
僕のほおには兄の手の感触が沁みこんでいて、たまにくすぐったくなるような、でも安心するあたたかい感覚を覚えている。今度は僕が「シュリュー」をする番だ。


©平山匠「モンスター大戦記ハカイオウ」2020 / 粘土, 兄の絵, 兄との会話